研究大会や講習会などはCOVID-19の感染拡大のためオンラインによる開催が続いておりましたが、COVID-19の感染法上の分類が「5類」に引き下げられ、現状の感染状況を鑑みて、第40回日本感覚統合学会研究大会は4年ぶりに現地開催をいたします。開催時点での必要な感染対策を行いながらの開催となりますが、皆様のご協力をお願い致します。また、オンラインの良さのことも考え、全てのプログラムではないものの事後配信を行います。事後配信は専門業者に依頼せずに行いますので、ご不便をおかけすることもあるかと存じますが、ご理解ご協力をお願い申し上げます。
今後の日本における感覚統合理論およびその実践の発展に向けて教育講座Ⅰでは、NPO法人なごみの杜代表 土田玲子先生に『「感覚統合とその実践」第三版から学ぶ―日本における感覚統合理論の発展に向けて―』というテーマでご講演いただきます。
本研究大会のテーマは「ことば・コミュニケーション・子どもとの関わり ~科学と臨床~」です。臨床において保護者の方からのご相談には、ことばに関することがあるかと思います。そのご相談ついて、どう考えてどのように支援や説明をされてますでしょうか? A.J.Ayresの感覚統合過程の発達仮説では、話す能力・言語は最終産物に近い段階にあります。では、ことばの基盤となる能力にはどのようなことがあるのでしょうか?特別講演では、生物学的な基盤から言葉についてご研究をされておられる帝京大学先端総合研究機構 複雑系認知研究部門教授 岡ノ谷一夫先生に「言葉の起源の生物進化仮説」についてご講演いただきます。特別企画Ⅰでは、発達科学・発達心理学からことばの発達をご研究されておられる武蔵野大学教育学部准教授 今福理博先生に「子どもはどのようにことばを習得していくのか」についてご講演いただきます。
セラピィでは、セラピストがどう考えて遊びや自己自身を活用するかが重要であるかと思います。また、ひとがひとと何かをするとき、多かれ少なかれなにがしかのコミュニケーションや関わりが生じるかと思います。それはセラピィにおいても同様であり、セラピストと子どものダイナミックな相互作用が存在すると思います。特別企画Ⅱでは、セッションにおけるセラピストの子どもの関わりについて心理学的な観点からご研究されておられる追手門学院大学経営学部准教授 長岡千賀先生に「子どもを応援するとは? ―セラピストの関わりの分析―」というテーマでご講演いただきます。特別企画Ⅱに続く教育講座Ⅱ「臨床におけるセラピストの脳内思考(試行)―何を感じ、どう考え、どうセラピィを展開するか―」は、臨床のヒントが得られるような内容です。日々臨床をされておられる姫路市総合福祉通園センター ルネス花北 森村慎吾先生、ハートランドしぎさん こどものこころ診療センター 新庄真帆先生に、事例を通して脳内思考(試行)をお話しいただきます。講師の先生方にはコメントを頂きつつ、子どもとの関わりについて大切にされていることなどをお話しいただき、質疑や意見交換ができればという企画です。講師は、令和健康科学大学リハビリテーション学部教授 小西紀一先生、関西医科大学リハビリテーション学部教授 加藤寿宏先生、愛知県医療療育総合センター中央病院 小松則登先生、追手門学院大学経営学部准教授 長岡千賀先生です。特別企画Ⅱと教育講座Ⅱでセラピィを科学的な面とアートな面の両面から考え、セラピィをより深める機会になればと思います。
音楽療法の基礎理論として、感覚統合理論を高く評価し実践されてきたシェリル・ケリー氏が本を出版されました。その本の日本語版出版記念も兼ねて、音楽療法の楽しさと奥の深さを分かち合う企画『―シェリル・ケリー著「シンプルソングで楽しい療育」日本語版出版記念ー』を行います。
COVID-19の感染状況が見通せない状況であることから、本研究大会では懇親会はございません。その代替としてはささやかですが、研究大会内においてロビー企画「会場あえる」を行います。(ひとに)会える・(出)会える・(話し)合える・(検討し)合える・(議論し)合える・(深め)合える…。臨床のことや感覚統合のことなど、ちょっとした疑問や相談・気になっていること・議論したいこと・困っていることなどを講師インストラクターや参加者の方々と気軽におしゃべりしてみませんかをコンセプトに企画いたしました。ぜひご活用ください。
研究大会の両日は奈良マラソンの開催日程と重なっており、宿泊予約が取りにくかったと存じます。また、当日は交通の混雑などが予想されます。ご不便をおかけいたします。
奈良には東大寺の大仏があります。東大寺は平和な世の中を願って建てられたと言われていますが、同時に仏教の教理を研究するという役割をもつ学問寺であったと言われています。各宗の研究所が設けられ、奈良時代には六宗兼学、平安時代には八宗兼学の学問寺であったようです。そのことから派生して八宗兼学という言葉は、広く物事に通じる・深くその道に達するという意味にも使われます。本研究大会が感覚統合の八宗兼学の場となればと思います。参加者同士がことばを交わす・コミュニケーションする・関わることを通して、感覚統合やテーマの「ことば・コミュニケーション・子どもとの関わり ~科学と臨床~」を広くかつ深めるきっかけや機会になりましたら幸いです。
一つの会場で盛りだくさんな内容になっております。皆様のご参加を心よりお持ちしております。
第40回日本感覚統合学会研究大会
大会長 嶋谷 和之
(株式会社BASEともかな FLOW郡山)